南半球に位置する国のため季節が日本のほぼ真逆であること、日本と殆ど時差がないこともオーストラリア向けに商品を売るという観点では面白い特徴です。
実際オーストラリアは国土が広いため、東部・中部・西部で大きく3つの時間を持っていますが、いずれも日本との時差はおおよそ2時間以内にとなっているので、ほぼオンタイムで顧客対応ができるメリットがあります。
人口は2500万人と国土が大きい割に多くはないですが、アジア太平洋地域で2番目に大きなオンライン(ネット)人口と安定した経済基盤で、EC(B2C)市場は安定した成長を続けています。
またジェトロが2018年3月に実施したオーストラリアのECに関する調査によると、同国のオンラインショッピング利用者の8割以上が海外サイトを通じたショッピングの経験があり、Amazon.comに限っても、その膨大な商品ラインアップなどを目当てに、43%が「利用したことがある」と回答している。
しかし、この度Amazon.comは5月31日、オーストラリアの利用者による同社の米国と英国サイトの利用を7月1日から停止すると発表しました。
従来オーストラリアの消費者はこれらのグローバルマーケットで商品を購入し、それをオーストラリアで受け取ることができましたが、7月1日以降は、2017年12月にサービスを開始したオーストラリア国内向けサイト「Amazon.com.au」に自動的にリダイレクトされることになります。
オーストラリアでは昨今、電子商取引(EC)を通じて海外から商品などを購入する消費者が増えており、アマゾンの今回の措置は、同国政府による越境EC取引への物品サービス税(GST)の課税強化に対応するものです。
現在、一般消費者による1,000オーストラリア・ドル(約8万4,000円、豪ドル、1豪ドル=約84円)未満の物品の輸入についてはGSTを免除されていましたが、7月1日からはこれが撤廃され、全ての物品の輸入に対してGSTが課税される予定です。
Amazon.comの今回の対応は、オーストラリアの消費者による取引を「Amazon.com.au」に集約し、同社のオーストラリア法人として税務面で適切に対応するためとみられています。
もちろんその一方で、今回の発表はオーストラリアの消費者から大きな反発を招いています。これまで税金がかからずに海外からオンラインで購入することに慣れていた人たちにとっては嬉しくない事態です。
オーストラリア政府は国内の小売業を守るために、この課税が公平な措置であると考えます。ではこの課税強化政策がオーストラリアの消費者を海外ECサイトから国内の店舗に向かわせることになるでしょうか?
これまでオーストラリア国内の商品ではなく、海外の商品を愛用してきた人達が課税だけを理由にその購入を諦めるとは考えにくいでしょう。
それどころかいかにして、これまでどおり海外から欲しいものを安く手に入れるかという気持ちを掻き立てることにならないでしょうか?Amazon.com.auもこれまで以上に商品のラインアップを充実させていくために、積極的にセラーに参加するように呼びかけています。
このようなマーケットプレイスを豊富な資源が眠っている未開拓地と考えてフロンティア精神で参入するか、またはオーストラリアからのニーズに直接応えれるように国内のサイト作りやサービスを充実させていくか、いずれにの方法であってもそこに早くリーチできるかが勝負を分けることになるでしょう。