編集者注:本記事はカナダ国際会計・税務アドバイザリーサービスの公認会計士Ofer Tamir氏によるゲスト投稿です。(2021年1月14日時点の情報です。正しくは最新の情報をご確認ください)
カナダのオンラインマーケットはここ数年で成長しており、多くの外国人セラーにとって魅力的なマーケットとなっており、現在も成長し続けています。
カナダ国内の税法では、非居住者がカナダで事業を行う場合は課税対象となります。現在、カナダの顧客に商品を発送すること自体はカナダで事業を行っているとは見なされませんが、FBAや第三者フルフィルメントセンターを利用してカナダに商品を輸入し、カナダで広告や販売をしている外国人のAmazonセラーは、カナダでビジネスを行っていると見なされ、課税対象となります。
しかし、これまではカナダの税務当局が納税を強制することはなかったのが主な原因で、カナダでの納税義務を認識していない外国人セラーが多いのが現状です。しかし、2020年11月30日に発表された「Canada Fall Economic Statement」 (カナダ秋季経済報告書) によると、これが変わってくるかもしれません。
この記事では、Amazon Canadaでの外国人セラーに関連するカナダの税法の規定と、登録・申告要件の概要について説明したいと思います。それでは始めましょう。
注意しなくてはいけないのは、12ヵ月間にカナダでの売上が3万ドルに達したAmazonセラーは、カナダ歳入庁 (CRA) に売上税口座を開設し、顧客から売上税を回収し(Amazonが行います)、売上税報告書を提出し、CRAに税金を納める必要があるということです。
しかし、セラーは3万ドルに達するより前に登録することはでき、カナダへの輸入時に請求される5%を含む、経費にかかった売上税を取り戻すことができます。同時に、早期登録が売上に与える影響について考慮する必要があります。
ほとんどの州では、連邦売上税および州売上税の両方を含む統一売上税 (HST) があります。これらの州では、CRAがHSTを管理し、企業からそれを徴収し、州にその一部を納税します。例えば、オンタリオ州では、HSTは、連邦税と州税の両方が含まれていて、13%になります。
年間総売上が150万ドル以下の企業は、CRAに年間連邦売上税と州売上税を納める必要があります (四半期ごとの前払いが必要な場合があります)。
しかし、ケベック州には、多少似ているものの別の制度があり、ケベック州内での収益が12ヵ月間で3万ドルに達するときに登録が必要となります (ここではQSTは14.975%で、そのうち5%の連邦売上税はCRAに、9.975%のケベック州売上税はケベック州に納税されます)。
しかし、別の売上税制度 (州売上税) を持ちながら、連邦政府と統一している州は少ないので、これらの州では登録に必要な要件が異なり、ほとんどの場合、Amazonでの外国人セラーは登録する必要がありません。
最後に、Amazonは顧客から売上税を回収していますが、登録し、報告書を提出し、回収した売上税をCRAに納めるのはセラーの責任であることにも注意が必要です。
カナダ国内法では、カナダでビジネスを行う人は、カナダの所得税の対象となります。カナダが他国と締結している租税条約の大半は、カナダにおけるビジネスがカナダの恒久的施設 (Permanent Establishment = PR) を通じて行われる場合にのみ、カナダにおいて所得税が課される一定の救済措置を規定しています。
カナダでFBAを利用すること自体はカナダでのPE (恒久的施設) とは見なされていないため、AmazonセラーはカナダでPEを持っているとは見なされず、カナダでは所得税を課されませんので、セラーにとっては嬉しい話でしょう。
しかし、条約の適用免除を申請するには、事業者はカナダで所得税申告書 (条約に基づく申告書) を提出する必要があります。申告には情報申告書が含まれており、これには1日あたり25ドル、最大2,500ドル (100日あたり) の遅延申請違約金が課せられます。
カナダのAmazon倉庫や同様のプラットフォームに商品を出荷するセラーは、記録上の輸入者と見なされるため、輸入者として登録する必要があります。登録は、所得税や売上税の登録と同じ方法で、事業番号は同じですが、補助番号は異なります。
カナダへの輸入品には、商品の種類と原産国に応じて5%の連邦売上税と関税が課せられます。第三者を介して行われた場合でも、この税金を納めるのはセラーの責任です。
カナダは2020年11月30日、Amazonやフルフィルメントセンターを運営する同様のプラットフォームを持つ企業からの要件変更を含む経済報告書を発表しました。
この報告書の中では、未登録のセラーが3万ドルの売上に達した場合、Amazonや同様のプラットフォームは、Amazonが販売者であるかのように登録し、売上税を課し、CRAに納めることが必要になると述べています。また、Amazonは在庫や売上などのセラー情報を記録しておくことも要求されます。新法が成立すると、2021年7月1日から施行されます。
その結果、Amazonがこの新たな責任を「受け入れない」とした場合、例えばイギリスやドイツなどですでに行われているように、Amazonのアカウントを登録・維持することをセラーに強制することで、セラー側に責任を転嫁することになりそうです。
これらの法令について詳しくは、「Canada Fall Economic Statement – Sales Tax Measures」(カナダ秋季経済報告書 – 売上税対策) をご覧ください。