上・【米国の現場から】米国進出の成功と失敗
→ https://blog.payoneer.com/ja/failure-and-success-of-us-expansion/
正確ではない情報発信における”勘違いの創出”
例えば、ハイチュウ。
最近一気に海外で流行ってきているようなイメージを持つ人も多いと思うが、
むしろ最近になって流行ってきているのは「ぷっちょ」の方だと言いたい。
目下、米国での「ぷっちょ」のプロモーションエネルギー(2019年8月現在)はすごい。
週末は各小売店、リトルトーキョー(LA)、イベントで無料サンプルを配りまくっている。
※リトルトーキョーLAでの光景
ちなみにハイチュウも同様戦略だが、しかしそれは10年以上昔の話である。
現地マーケティング、プロモーションをコツコツ頑張ったハイチュウは10年以上前から、既にアメリカの田舎で購入できた。
※これにおいては前職で関わっていたので階層深くまで語ることが可能
米国はグミ消費量が多い中、ソフトキャンディという類似カテゴリーで「味の種類が多い、噛み心地が独特、味がおいしい」、と言ったところで、アジア人の人口増加とともに市民権を得た。そして流通努力を怠らず、価格を抑えて販売できている事も大きな要因といえる。
ちょっと前に日本人メジャーリーガーのお陰でハイチュウが大流行、と言った記事があったが、それは既に出来上がった市場の上に成り立っているのである。
こういった正確ではない情報は、マーケティング感覚や感性を鈍らせることになるのではないかと危惧している。
自分の事が自分ではわからないように、インバウンドの成功事例も海外の方が成功させているケースは多く存在する。
その中で、一つ上げるとしたらアレックス・カー氏プロデュースによる空き家を利用したステイ事業を柱としたプロジェクト。
徳島県の”ド田舎”に失われゆく日本の山里の美しさや伝統を今にあった形で、持続可能なものとして残しつつ、と言ったコンセプトで白人を中心に人気の高い観光地と化している。
【桃源郷祖谷の山里】
※桃源郷祖谷の山里HPから
このような感性と創造性を日本人が持ち、さらに実行に移すこと、そして海外に伝達をしていくことが今後の課題といえるだろう。
じゃあ、企業としてはどのような形で成功失敗の図式があるのかというところは疑問符が立つところだと思う。
多くある日本企業の中で、具体的に上昇気流に乗っている企業を1つ紹介しようと思う。
~ITOEN USAの躍進とその理由~
成功の理由はひとえに、粘り強く資金投下しマーケティングを行ったことに尽きるが、具体的なクリティカルポイントは、
・黒字転換までの踏ん張り(リソース)
・営業順序(マーケティング)
・製造拠点(流通)
と考える。
今回は営業順序のみに絞り少し具体的な話をする。
※個人的な米国現地での経験則を元にしたもの
2001年に米国進出(西海岸から)し、アジア系マーケットでのペットボトル/缶飲料の販売からスタート。
徐々に米系マーケットへの導入を進めるも、利益が出ずアジア系マーケットが支える
※米系マーケットは棚代や協力費がアジア系と比較し膨大
コストコへのTea Bag導入を皮切りに、アマゾンでのペットボトル飲料の販売が軌道に。コストコやアマゾンでの売上拡大が影響し、大手米系小売チェーンへの導入も進み始める。
しかしながら現在も、なお利益を多く稼いでいるのはアジア系マーケットであり、利益率が低くなる米系メインストリームマーケット(Wholefoods, Sprouts, Kroger, Gelsons, その他Walmart) のマイナス面をカバーし支えているのが現状。
今後は新商品開発、アジア系を中心に利益率の向上を目指す ←イマココ
王道の米国進出の流れではあるものの、模索は現在も継続している状況のようだ。
これについては、どこか機会があれば更に踏み込んで記事にしようと思う。
~米国進出のよくある失敗例~
失敗事例を名指しでということは苦しくなりそうなので、よくある失敗例を挙げようと思う。
失敗する場合のよくあるポイントを2つ紹介する。
海外進出=白人ターゲットといった考え方は、須らく失敗するケースが多い。
マーケットインを苦手とする前提で、人種価値観好みが異なる人種に売るのは困難である。そのため成功事例である通り、アジア人ターゲットを前提にまずはマーケットにソフトランディングをさせる事が成功の可能性を上げる施策となるケースが多い。
また、オンライン販売でも同様のことが言える。
ロングテールビジネスがあるがゆえに、人種ターゲットにかかわる要素が低いことが1つの要因である。しかしプロモーション部分で人種をターゲティングするなど、売上UPのための精度を上げることで成功角度が上げることが可能だ。
4P(Price、Place、Product、Promotion)に1P(People)を追加することで、米国での成功角度を上げることが可能といえる。
本当に商品をブランディングさせていくためには、時代に合ったオンラインとオフラインの足並みを揃えた戦略策定が必要だ。
しかしオンラインとオフラインどちらかに固執した考えで進めると、せっかくの機会を損失する恐れがある。
海外進出において、情報は大きな武器になる。
何が武器になるか判別し、最適なタイミングで投下する必要がある。
そのために、どこで何が手に入れられ、適切なタイミングを見極め精査しカードを切る必要がある。
オンライン上で取得できる定量データや各種レビューにおいては、オフライン進出の掛け替えのない財産になる。
一方で、オフライン上で取得できるバイヤーからの指摘や現地棚割りはオンライン上で販売するための次なるステージへの肥やしになる。
またオフラインでの実体験(現地調査など)は、販売者における経験や感覚を研ぎ澄ますエネルギーになる。
価値観の違う社会への進出だからこそ、情報という無形財産の取得・効率活用を強く意識する必要がある。
マーケットイン思考、これが何よりの海外進出成功への基本思考である。
しかしながら、日本の企業の多くが現在の商品を英文化することを前提に海外進出を行うことを考える。
それがまず可能性を低くしてしまうアクションであることを理解していただきたい。
もちろんそのまま販売できる商品も存在するが、今だけを見ずに経済状況と同時に成長していける曲線に乗せるという意識で、是非マーケットインのマーケティングに時間とコストを注いでほしい。
すでに越境ECで販売を行っている方で、マーケティングに意識が向いていない方は是非今からでも業務ルーティーンに入れていただきたい。
必ず今後のビジネスの糧になる。
これからは更なるデジタル化、ビジネスプレイヤーの変化、国際競争の激化が予想される。
その波に乗れるように、最適な準備だけは進めていきたいと、個人的にも常々思っているところである。
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