編集者メモ:本ブログは、Essay SupplyのコマーシャルディレクターであるLeona Henryson氏のゲストブログです。
最近、T-Mobileはカスタマーサービスを改善するための新しい戦略を立ち上げました。と言っても、人工知能、拡張現実、その他の新たな技術を取り入れた訳ではありません。T-Mobileのカスタマーサービスを改善する、「新しい」方法とは、人とのつながりにおいて、古き良き時代に戻るということです。複雑な電話の自動応答やボットを廃止して、カスタマーコミュニケーションで人間を中心に位置づけるのです。顧客中心主義を追求する傾向は、今日益々顕著になっています。顧客との間に信頼とロイヤルティを築くために、効率性やコスト削減対策さえも後回しにして、顧客を第一に考えるのです。
顧客中心主義とは、極めて常識的なビジネス戦略に対する新しい用語です。根本的には、すべての意思決定の拠り所として、株主や利益よりも、顧客に焦点を当てることを意味します。顧客に悪影響を及ぼし得る短期間の利益増加よりも、長期的な顧客関係を優先させるのです。
顧客中心主義は、ビジネスにも好影響を与えることから、人気が高まっています。実際、経営コンサルティング企業のBooz and Companyの調査によると、あるファッション小売業者は、顧客中心主義のビジネスを実践したおかげで、商品ライフサイクルを業界平均の6か月から、わずか15日に短縮しましたし、某通信事業者は収益性を22%向上させました。ヨーロッパの大手百貨店は、年間利益を7%増加させました。顧客を中心に据えることで、利益を生んでいます。
顧客中心主義の企業になるには、哲学よりも多くのプロセスが必要になります。単に顧客中心主義であると考えるのではなく、適切な行動を推進するプロセスを導入することが重要です。顧客中心主義の企業にしようと考えているならば、以下の4つの主要動向を考慮に入れてください。
顧客を意思決定プロセスの中心に置くには、社内のすべてのステークホルダーが参加する必要があります。すべての部門が顧客を中心に据えることで、顧客中心主義の意思決定が習性として身につくようになります。
顧客をチームの中心に据えるのに役立つ、いくつかの戦略があります。第一に考慮すべきことは、チーフカスタマーオフィサー(CCO)を任命した企業の数は増加傾向にあることです。CCOは、企業と顧客との関係全体を調整する役目を担う執行役員です。サポートチームとサクセスチームは、頻繁にCCOへ報告しますが、この2つのチームは正に機能横断型の組織です。実際、フォーチュン500企業の10%がCCOを任命しており、この数は増加しています。
企業が顧客を中心に据える第2の戦略は、すべての従業員が業績を評価する際に、顧客の成功実績に基づいて報酬を得る体系を確立することです。すべての部門が、NPS(顧客ロイヤルティを測る指標)や、チャーン(解約)などの顧客指向のメトリクスを羅針盤として使用することで、行動の方向性を一致させることができます。
顧客中心主義の世界での最も大きな変化の1つは、企業の方から顧客へ近づく必要があるということです。顧客に寄り添うことができる場所は、顧客が頻繁に訪れて利用することができる、オンラインスペースです。そのスペースで顧客に寄り添うには、コミュニティフォーラムへの参加、Twitterでの返信、Facebook Messengerのアクティブ化、アプリ内チャットの提供、さらにEメールでの素早い返信などを行なうことが含まれます。また、そこで多言語サポートを提供すれば、異なる地域の顧客との接点も生まれます。
より多くのコンタクトチャンネルを開設するうえでの最大の課題は、すべてのチャネルをきちんと把握して、顧客への回答をチーム間でたらいまわしにしないことです。これには、顧客との会話を統制するマルチチャネルヘルプデスクが役立ちます。従来のヘルプデスクは、顧客からのコンタクトごとに番号を割り当てていました。この手法は、企業が受け取った質問を効率的に処理するのには役立ちましたが、顧客とのすべての会話をフォローすることは困難でした。オムニチャネルのサポートにより、顧客がどのチャネルから連絡を取っているかにかかわらず、チームと顧客とのすべてのコンタクトを一連の会話としてまとめることができます。
プロアクティブに対応するということは、顧客がコンタクトしてくる前に、先回りして問題に対処することで、顧客が連絡を取る必要を完全に無くすことを意味します。今や最新のテクノロジーによりカスタマージャーニーへの洞察が得られるようになったため、顧客がさらなるサポートを求めている箇所を、企業が容易に把握できるようになりました。このことから、プロアクティブ戦略を取り入れることが、新たな動向になっています。AIや機械学習ツールは、真のプロアクティブカスタマーサービスへの扉を開きました。
プロアクティブサービスは、2つの理由から必勝の戦略と言えます。第一に、顧客は企業がプロアクティブな対応に時間を掛けることを、好意的に見ています。消費者の87%は、後になってサポートを受ける必要が無くなるなら、プロアクティブに連絡してもらうことを望んでいます。たとえば、配達が遅れている場合は、顧客に更新された予定配達時間を通知します。顧客には逐一情報が提供されるので、注文した商品の現在位置をサポートに質問する必要が無くなります。第二に、プロアクティブに対応することにより、企業側もコストを削減することができます。顧客が問題を訴える前に早急に解決すれば、かなり経費を抑えることができるのです。
顧客の要望に基づいて意思決定を行うには、実際に顧客の声を聞いて何を望んでいるかを理解する必要があります。MITの調査の調査によると、3Mでは、顧客が提案した改革を実践した時、自社チームによるアイデアを実現した場合と比較して、8倍の利益を得ることができたということです。これにより、5年間で1億4,600万ドルの追加売上を得ることができたのです。
顧客からのフィードバックを収集することは、多くの場合、個別に顧客の要望を聞くのと同じくらい簡単にできます。顧客フィードバック調査をする際は、顧客に貴重な時間を割いてもらうことになりますので、極力簡潔な内容にしましょう。アプリ内フィードバックウィジェットを使用する場合でも、EメールやSMSでアンケートを送信する場合でも、顧客は自分の生活をより良くするために企業側ができることを、喜んで教えてくれます。
顧客の声を聞くことは、有望な顧客を惹きつけるのに役立つ、優れたウェブサイトコンテンツの制作にも役立ちます!商品やサービスについて、顧客がどのような質問をしているかを知ることで、マーケティングチームに顧客と直接会話するように促すことができます。
顧客中心主義の企業文化は、一夜にして醸成することはできず、企業の習慣を変えるのには、時間とプロセスが必要です。しかし、以下の5つの動向に基づく戦略を取り入れることで、全社的な変革をすぐにでも開始することができます。
これらの戦略は、最先端の技術を取り入れる必要があるかもしれませんが、技術そのものだけではありません。最先端の新しいツールを持って、革新的なテクノロジーを追い求めるのは魅力的でしょうが、イノベーションすることばかり考えるのは間違っています。その代わりに、まず顧客が何を求めているかをよく見聞きしてから、満足度をあげるのに役立つツールを選定してください。
このエクスペリエンスの時代においては、顧客中心主義の企業こそが、コスト無視の売上至上主義に走る競合他社に対して、常に打ち勝つことができるのです。
Leona Henryson氏は、Essay Supplyのフリーランスライター兼UXデザイナーです。また、彼女は様々なブログに寄稿しています。執筆やデザインをしていない時は、水泳、ハイキング、そして、シーズンが来ればスノーボードを楽しんでいます。