世界一の小売店WalmartのEC戦略

WalmartのECの現在地

WalmartのEC戦略がAmazonに対抗できるのかということに2007年EC販売開始当初から疑問が投げかけられてきました。しかしここ数年になってWalmartの EC戦略が成果を上げ始めています。

この世界最大の小売店と呼ばれるWalmartは最近、Appleを抜いて世界第3位のオンライン小売業者となり、四半期ごとのEコマースの成長は驚異的な43％に加速し、さらなる飛躍を2019年に目指しています。

2019年4月のWalmart.comの月間ユニークビジター数は約3億1千万人で、前のホリデーシーズン中に5億人弱にピークに達しました。

今回は、Walmartの変革をもたらすEC戦略が、Amazonとの有望な競争相手になっている要素をまとめています。

若年層ミレニアム世代の顧客に共鳴するデジタルブランドの獲得

2016年以来、Walmartは EC戦略の一つとして、若者や新しい顧客がこれまでWalmartにはなかった商品を発見できるように、多くのオンライン小売企業の買収と戦略的パートナーシップを行ってきました。

これらの買収の多くは都会派のミレニアル層をターゲットにした小売業者とデジタルブランドが含まれています

• Jet (2016) – Ecommerce retailer
• Shoebuy (2016) – Footwear
• Moosejaw (2017) – Outdoor apparel
• Modcloth (2017) – Women’s apparel
• Bonobos (2017) – Men’s apparel
• Eloquii (2018) – Plus-size fashion
• Bare Necessities (2018) – Women’s intimates
• Art.com (2018) – Home accessories

出典：https://corporate.walmart.com/our-story/our-history

同時に、同社はAmazonの市場との競争力を高めるために戦略的パートナーシップも確立しています。Googleとのパートナーシップなど、Walmartの商品をGoogle ExpressやGoogle Homeで音声ディバイスを使用する買い物客に提供しています。

アパレル製品の再発明

WalmartとAmazonは、オンラインアパレルをめぐる激しい戦いを繰り広げています。Amazonは、経営破綻してしまったSearsやJCPennyなどのデパートで扱われていた、ほぼすべてのアパレルブランドとプライベートレーベルの両方を自社のオンライン販売に積極的に取り入れてきました。

それに対してWalmartは、独自の新しいファッションラインを主要なアパレルセグメントに投入することで対抗しました。Walmartは新しいターゲット層を理解するためにより多くのデータを収集し続けており、若いターゲット層に支持されるオンラインアパレル業者とプライベートレーベルを立ち上げています。

2018年のプライベートレーベルの発売には、子供服のWonder Nation、レディースカジュアル服Time and Tru、プラスサイズ服Terra and Sky, やメンズ服Georgeが含まれます。またElizabeth Stewart とEllen DeGeneresなどのメディアで活躍するセレブレティとのプライベートレーベル提携も開始しています。

ECの食料品販売の成長

2018年からオンラインでの購入と店頭でのピックアップ（BOPUS = Buy Online Pick Up in Store）の利用顧客獲得で、AmazonとWalmartの競争が激しくなっています。食料品はAmazonの最も急成長しているカテゴリであり、Amazon Fresh、Amazon Pantry、Whole Foodsストアのネットワークでの店頭（BOPUS）モデルへの投資でこの成長をサポートしています。

しかし、Walmartは米国人口の90％に到達できる4,700を超える物理的な店舗の巨大なネットワークを活用して、独自の店頭ピックアップモデル（Walmart Grocery Pickup）を改良することで独自の強みを活かしています。

この成長により、WalmartはAmazonよりも食料品のEコマースで初めて優位に立っています。今後もWalmartが食料品のEコマースに注力することは明確で、特に目立った事業として低価格で高品質な食品の安全性と生産の透明性を管理するためにIBMと共同でブロックチェーンを活用するプロジェクトを始めています。

買い物客の体験を改善するためのウェブサイトとモバイルの再設計

Walmartは、2018年に2つの非常に重要なアップグレードを行いました。ウェブサイトを最新のデザインに変更し、モバイルアプリを改善してショッピングをより簡単かつ迅速に行えるようにしました。

以前までの、倉庫に商品が並んでいるような雰囲気の古いウェブサイトはなくなり、小売業者のオムニチャネル機能を強調する、すっきりと見栄えの良いインターフェースに置き換えられました。

ウェブサイトの刷新に加えて、ウォルマートはモバイルアプリを大幅に改良し、顧客が店舗に到着する前に顧客の注文合計を計算する買い物リストを簡単に作成できるようにしました。

到着すると、顧客はアプリを使用して仮想アシスタントにアクセスし、デジタルマップで顧客を商品にルーティングして、できるだけ早くショッピングを完了することができます。

このアプリは、毎週の広告、ベイビーシャワーとウェデイングのレジストリ、バーコードスキャナー、モバイルエクスプレスリターンも備えています。これは買い物客が近くのウォルマートに商品を簡単に返品できる機能です。

このアップグレードは、デジタルプラットフォームと4,700店舗の巨大なネットワークと統合するというウォルマートのより大きなオムニチャネル戦略の強化が進んでいることを証明しています。

まとめ

Amazonとは違ったマーケットアプローチの販売戦略を練り、これまでの大型量販店的なイメージを払拭して、新たにミレニアム層の顧客層を取り込んでいっているWalmartの動向に、今後はさらに注視していく必要がありそうです。