市場動向

越境ECの近未来予測

越境ECの現状

近未来予測をする時にまず今のポジションを確認しておかなければなりません。越境ECは今まさにライフサイクルでいう成長期前期に入っていると考えられます。これから多くの事業者が参入し、さらに越境ECの市場規模は飛躍的に伸びていくタイミングです。

今のプレイヤーとしては越境ECに目をつけた個人や個人事業主、またECに強い中小企業などがメインプレーヤーとなっています。売り上げ規模でいくと個人系の運営では月商で100ー500万円くらい、中小企業では300−1000万円くらいのところが多いように思われます。

ちょうど国内ECでいうと2000年〜2005年の感覚だと思っていただければ結構かと思います。その当時は市場規模の伸びがあり、新規客は取りやすく、粗利もある程度取れて、広告の費用対効果もまだ良い、というところだったかと思います。

越境ECの未来を国内ECから考えてみる

越境ECは今、成長期前期なので、国内ECはより進んだライフサイクルに位置しています。ですので、国内ECが成長期前期からどのような流れで今の成熟期に差し掛かっているのか、という足取りを見ることが、越境ECの今後を考えるのに一番参考になります。

国内ECは成長期前期を越えてから様々な変化が起こりました。まず一番大きいのが競争相手の激化です。実店舗が厳しくなり、国内ECの売り上げが伸びていると聞きつけた経営者が一気に参入しました。
このことにより、価格競争が起こり、サービス合戦が起こり、利益率が下がり、広告単価が上がることで費用対効果が下がり、売り上げは伸びるのだけど利益などが厳しい状況に突入します。また大手資本の本格参入もその流れを本格化させます。

次に業界の構図が変わるということです。ECで力を付けた店舗や企業の影響力が強くなり、今までの業界の序列が変わり、ECをうまく使った企業が次の覇権を握るところまで様変わりする業界も出てきます。中間業者はなくなり、ものを作るところも売り始め、ものを得るところは作り始め、流通が極端に圧縮されていきます。

最後に、多くのサードパーティによるサービス展開も増えてきます。受注管理や顧客管理、物流や制作、プロモーションのアウトソーシングなどオープンイノベーションにより、自社のコアコンピタンスに集中し、生産性を向上させ、さらなる売上アップ、利益アップを目指せる会社と、その流れには入れずにジリ貧になっていく企業で別れていきます。そしてニッチトップでもある程度の売り上げが取れるくらいまで市場が成熟していくので、メイン商材のトップが取れないようなところはニッチトップなどを狙う戦略に変わっていき、市場が細分化されていきます。

越境ECのこれからを考える。

越境ECの近未来もこのような流れを取ることが予想されます。ただ違うのが、日本の国内ECにおいてはある程度、各企業間のスピードや情報などは横並びの状況の中でのライフサイクルの進化でした。

ただ越境ECは全世界を相手にした日本の中だけでは考えられないようなスピードやイノベーションが起こる場でビジネスをするということです。その認識をしっかりしていないと、市場に喰われてしまうことになります。

また越境ECの場合は勝手が分からない、やることが多くなる、ということで間の人が増えていきます。これにより利益率の圧迫とスピードの鈍化などのデメリットや人の問題というのが国内ECよりもより顕著になってくると思われます。

具体的な越境ECの近未来

まず一番初めに起こるのは誰がレッドオーシャンから一抜けをするのか、ということです。今の市場での競争は売れているものを売る、という競争です。この競争は短命であり、資本力のある会社が出てきた時には中小企業が太刀打ちできないレベルの問題になります。

ここを抜け出せないと売り上げはあるが、利益がなく、一度強い競合が出てくると売れなくなり資金ショートして会社が潰れてしまう、ということになります。

このタイミングになると、個人や個人事業主系で越境をやっていた人はメインプレイヤーではなくなります。中小企業で勢いのあるところがメインプレーヤーになります。

勢いがない中小企業や検討に検討を重ねるある程度の規模の企業はまだここでは参入しません。もっとノウハウが明確になり、失敗確率が減り、多くのサポーターが出てくる頃にやってきます。それまでにシェアを高められるか、業界に影響力を与えることが出来るくらいにならないといけません。

レッドオーシャンから抜け出すのは、モノづくりをするか、売る力を高めるか、ということが出来たところになります。

あと見ておかなければならないのは、大手プラットフォーマーの動きです。特にAmazon経済圏とAlibaba経済圏、ebay経済圏は越境EC事業者にとって大きな影響を及ぼすので、どの段階でどの国にプラットフォーマーが進出するのかで、その国の越境ECの動きが変わってきます。特に近未来での注目は今まで欧米で強かったAmazonがAlibabaが強いアジア圏に進出していくので、そこでの覇権争いは注目です。

近未来のその後、、、

近未来のその後についても少しだけ考察を深めたいと思います。ある程度、各業界や業種、商品ラインによるメインプレーヤーが決まり、シェアや序列が決まってくると、次のステップは実店舗展開と人材採用&育成が肝になります。

海外において店舗がある、ない、というのはブランド認知においても大きな違いがあります。越境ECよりも多くのリスクを抱えてしまうことになりますが、それを補ってあまりあるメリットを教授することが出来ます。

最終的には人材採用と育成の勝負になります。今はまだプレーヤーが少ないので、ノウハウや経験の差よりも、やっているかいないか、というところが勝負のポイントになっていますが、その次はリサーチ力やブランディングノウハウ、プロモーションノウハウなどを担う人材の確保が大事になります。それが出来る人は非常に重宝され、マーケット価値の高い人材になれます。そしてそのような人が越境ECの次の時代を切り拓いていくのだと感じています。

Mitsutoshi Murata

株式会社プリンシプル 代表取締役 船井総合研究所WEBコンサルティングチーム コンサルタント、チームリーダーを経て、2013年、株式会社プリンシプルを設立。メンズの総合セレクトショップ フリースピリッツ立上げ。2014年より越境EC事業を開始し、2016年、越境ECが全体の売上構成比20%に成長