GST(オーストラリアの物品・サービス税)に関する法律の改正により、Amazonはオーストラリアの顧客に対してAmazon.comサイトの利用を7月1日から停止すると発表しました。この発表は、低価格商品の購入機会が失われるオーストラリアの買い物客と、オーストラリア市場での販売機会が失われることを懸念した越境セラーの間に、激しい怒りと不安を招いています。しかしPayoneerでは、Amazonの越境セラーにとって、隠されたチャンスがあるのではないかと考えています。今回は、法律改正を最大限に活用するためのガイドを紹介します。
オーストラリアでは、自国内で販売されたり消費されるほとんどの物品やサービスおよびその他一部の品目に対して、10%のGST(物品・サービス税)が課税されています。GSTは、オーストラリアのほとんどの企業に適用されます。年間売上高(利益ではありません)が75,000豪ドル以上の企業が、GSTの課税対象となります。
これまで、Amazonを含むオーストラリア以外の企業は、電子書籍、映画やアプリのダウンロードなどのデジタル製品を販売した場合、または1,000豪ドル以上のサービスを提供した場合にのみ、GSTを支払う必要がありました。今回の法律改定で、オーストラリアの買い物客に販売する1,000豪ドル未満の少額商品を輸入する国際企業に対して、GSTを拡大して適用することになりました。これには、ファッション商品、書籍、電子機器、おもちゃなどが含まれます。2018年7月1日以降は、1,000豪ドル未満の商品がGSTの課税対象になるということです。
オーストラリア政府によると、GST改正法の目的は、オーストラリアの地元企業の活性化を図ることです。その結果、オーストラリア国民に地元での購入を奨励することにつながると言うわけです。表面的には、GSTの法改正は多くの越境セラーにとって明らかに不利となります。オーストラリア市場においては、商品価格に10%を上乗せするので、需要が減る可能性が高いと同時に、グローバルマーケットプレイスは、GSTを含む最終価格を提示する前に、購入者の所在地に関する情報を収集するためのインフラストラクチャを構築しなければなりません。
オーストラリアAmazonのようなオンラインマーケットプレイスでは、すべてのサードパーティセラーからGSTを徴収する責任があります。このプロセスは技術的に複雑なので、Amazon.comは、オーストラリアの買い物客に対して、グローバルサイトを閉鎖し、Amazon.com.auへのアクセスのみを許可することにしました。クロスボーダーの輸入業者にとって、この改定は理想的とは言えないかもしれませんが、オーストラリアAmazonのセラーにとっては絶好の機会になりえます。
GSTがオーストラリアAmazonの小売業者にとって、不利に見えて実は有益である理由はいくつかあります。
Amazon.comはオーストラリアの買い物客を締め出しますが、オーストラリアAmazonは企業に対しては依然として非常にオープンです。Amazonプライムのサービス提供が来月に差し迫っている中、オーストラリア在住のAmazonファンはアカウントを米国サイトからオーストラリアサイトに切り替えるよう促されるため、オーストラリアAmazonセラーのビジネスが拡大する見通しとなりました。さらに、オーストラリアの顧客に自社のオンラインストアで直接販売してきた多くの主要ブランドは、複雑なGSTの課税と支払いを追加する必要があるため、直接販売をペースダウンさせる可能性があります。Amazonのグローバルサイトと、企業のオンラインストアでの直接販売との競争が抑えられることから、オーストラリアAmazonの小売業者は、今後数ヶ月でビジネスを成長させる絶好の機会を得ることになります。
消費者が、同じ商品ならより安い方を望むのは当然です。オーストラリアの人々は、地元の店舗とAmazon.comの間に相当な価格差があることを見てきました。再び地元店舗から高価格で買い物をしたいはずはありません。現在、オーストラリア国内では、世界の小売サイトの2倍の価格で販売されています。これと比較して、GSTは価格の10%を追加するだけで済みます。GSTを追加しても、世界のオンライン小売業者は依然として、地元の実店舗に対して競争優位に立つことができるのです。
1,000豪ドル未満の価格の輸入商品にGSTを課税することは、グローバル商品とローカル商品との間にある大きな価格差を縮小するのに役立ちます。輸入品がわずかに高価な程度になれば、オーストラリアAmazonの地元セラーはより競合優位に立てるはずです。そして、オーストラリア人が地元のオンラインセラーから購入するのを促進し、オーストラリアAmazonの売上を押し上げることになります。
Amazonはシドニー近郊に、2番目の配送施設を開設中で、オーストラリアAmazonプライムは今にも始まろうとしています。迅速な無料配送という恩恵は、オーストラリアAmazonでの価格を引き下げ、現地産のブランド品の魅力を高め、オーストラリアAmazonのセラーの現地市場での魅力をさらに引き立てます。
オーストラリアでサービスしているグローバルマーケットプレイスは、オーストラリアAmazonだけではありません。Tophatter、Joom、Wish、eBay、Lazadaなどは、いまだにオーストラリアに直接出荷をしており、GSTを徴収していますが、GSTは国境を越えた取引になんら障壁にはならないことを示しています。特に、eBayは、オーストラリアAmazonのように、地元の小売商人がグローバルなECプラットフォームでさらに多くのローカル販売を行うことができることを実証しています。
オーストラリアは未成熟で巨大なEC市場です。オーストラリア人のEC支出は年々増加の傾向にあります。2017年のオンライン購入額は19.2%増加し、2017年のオンライン支出総額は213億豪ドルで、18.7%の増加となりました。GSTの影響を加味しても、市場は2018年から2022年にかけて毎年8.8%の伸びを維持すると予測されています。
2018年におけるオンラインショッピングのユーザー普及率はわずか51%に過ぎず、国内中に広がるには、まだ十分余地があります。Australia Postによると、オンラインマーケットプレイスの2017年の成長率は74%で、生活に浸透しつつあることがわかります。また、オーストラリア人は購買力が高く、ユーザー当たりの平均販売額(ARPU)は840豪ドルで、中国を超えて世界第8位にランクされています。
このチャンスは、オーストラリアの他の有力なマーケットプレイス、すなわちeBayオーストラリア(オーストラリア最大のマーケットプレイス)、Catch.comオーストラリアなどにも及んでいます。NORAのCEOで創設者であるPaul Greenberg氏は、「オーストラリアにとって、フラットな世界は敵ではなく最大の友人です。業界として法改正を期待できる一方で、小売業者はこのすばらしいチャンスを活かしていく必要があります。オーストラリアの人口は2,400万人で、世界市場は70億人を超えています。私たちの小売の未来は国境を越えたものなのです。」
今回のGST規制の改正は、オーストラリア市場をターゲットとする越境セラーにとっては障害と見なされるかもしれませんが、オーストラリアAmazonを利用しているセラーにとっては、特に10月から12月の掻き入れ時に、絶好の販売チャンスが訪れると言えるでしょう。