サブスクリプションの可能性
サブスクリプションボックス2つのタイプ
アメリカでここ数年で増え続けているサービスにサブスクリプションボックスというサービスがあります。 サブスクリプションボックスには2つのタイプがあります。
1つは、同じ商品を定期的に発送する、定期補充を目的としたサービス。もう1つは、利用者の身体的な特徴や嗜好(しこう)に合わせて毎回違う商品を選び、それらを詰め合わせて発送するものです。
最近サブスクリプションボックスとして成長を遂げているのは後者のタイプです。後者のサブスクリプションボックスのポイントは、目利きの商品構成、パーソナライズドされた商品を発送し、返品無料という点があげられます。
アメリカのサブスクリプションボックス市場
アメリカではアパレル、ヘルスケアから化粧品、食材、書籍、おもちゃ、ペット用品に至るまで、6,000以上ものサービスが存在しています。
サブスクリプションのeコマース市場は、年間100%以上成長しており、2011年の57.0Mドルから2016年には2.6B以上の売上を記録しています。
ただしすでにこのタイプのサービスは新規参入者があとを絶たず競争も激しく、2016年度を境に利益があげられない企業は淘汰されているのが現状になっています。
その中で2011年ごろにスタートしたサービスで、ベンチャーキャピタルから投資をうけ、サービスを拡大し販路を確立した企業もあります。
サブスクリプションの事例2社
ミールキットサービス(宅配食材)Blue Apronや、男性の髭剃り商材に特化したサービスのDollar shave clubが代表的な2社です。
後者のDollar shave clubは2016年に世界大手企業のユニリーバが高額で買収したことでも話題になりました。
この買収は、ベンチャーキャピタルから投資を受けているEC企業の案件としては、史上4番目の規模となります。(参照)
サブスクリプションモデルのポテンシャル
ここで注目することが、大手企業がまだまだ利益率の低かったDollar Shave Clubを売り上げ見込みの5倍もの値段で買い取った理由です。
ユニリーバCEOのPolmanは同社がミレニアム世代の忠実な消費者層を持つ「本質的に収益性の高い」ものと説明しています。Dollar Shave Clubは、2012年に発売されて以来、約320万人の顧客に成長しました。これは オンラインでの定額課金というモデル、印象的なブランド、優れた消費者体験を武器 に既存の髭剃り市場への浸食を成し遂げたことを意味しています。
そしてそのデジタル戦略モデルに、大手企業は価値を見出しています。予測分析を用いて顧客の嗜好を特定すれば、製品をカスタマイズしてプレミアム料金を設定することを可能にし、サブスクリプションのモデルを自社の高級ラインにも拡大することも見越しているといいます。
ユニリーバの最も有望な市場の1つ中国の景気後退によって、実店舗での小売業の売上高は落ち込んでいましたが、オンラインでの売上高は、全四半期で前年比40%以上の伸びが期待されています。このように越境ビジネスのチャンスに乗じるための「デジタル販売力」を強化できるとも見込んでいるといいます。
新たなサービスを見出すデジタルマーケティングとして
このように大手企業がサブスクリプションサービスに注力し始めていることから、今後どの業界でもこのサービスは、あってあたりまえになるのではないかという見解もあります。
企業にとっては サブスクリプション サービスを提供するリターンとして、忠誠心のある顧客を集め、その顧客データを収集解読し、新たなサービスを見出すデジタルマーケティングが確立できることになるでしょう。
シェアリングエコノミーとの共通点
また近年の消費トレンドを見ても、シェアリングエコノミーがフルオーナーシップをもたなくても利用できるという意味では サブスクリプションサービスと同質なものであるとも言えます。これからは消費者は何でもまずは試してみてから購入するかどうかを決めるだけでなく、試しながら経験できる顧客体験を重要視するようになってくるのかもしれません。
現にオフィスシェアリングなどは、その場所を借りるだけが目的ではなく、そこで体験できる繋がりや提供されるサービスのメリットを求めて利用者が増えています。また航空業界でも定額で飛行機が利用できるの飛行機のサブスクリプションサービスも検討されているといわれています。
サブスクリプションサービスはもはや商品を試すことだけが目的のサービスではなく、これまでにはなかった感動する顧客体験を企業と顧客で作り上げていくサービスとして用いられる可能性があります。そしてこのビジネスモデルは世界中の人に体験をとおして理解しやすい最適なサービスになりえるといえるでしょう。
越境ECでもサブスクリプション型は増えてくると思われますし、顧客体験が優れたものは国を越えて求められると考えられます。優れた顧客体験を提供するためにも、お客様のことをより知っていく努力が必要になります。