米国最高裁の判決: 各州でEC販売の売上税徴収を義務付け
編集者メモ:本ブログは、Michael J.Fleming & Associatesの創設者であるMichael J. Fleming氏によるゲストブログを日本語に翻訳したものです。
何年もの間、多くのセラーは1992年のQuill社の米国最高裁判例(Quill Corp. v North Dakota(91-0194)、504 US 298(1992))を引用して、売上税を徴収する義務がない理由を正当化してきました。この判決は、基本的にセラーによる売上税の徴収義務は、セラーが州内に「物理的拠点」を保有しない場合は行使できないというものでした。
一部のセラーには、この判決の適用が適正でしたが、他のセラーは、物理的拠点を構成するものを誤解していた可能性が高かったのです。しかしそのことは、もはや重要ではありません。なぜなら、米国最高裁判所は、2018年6月21日木曜日に、South Dakota v. Wayfairの判決で、物理的拠点の必要性を最初に確立したQuill v. North DakotaとNational Bellas Hess v. Department of Revenueの判例を覆したからです。
つまり、単にその州に所在する購入客に販売するだけで、売上税の徴収が義務付けられることになります。
州にとっては大きな勝利
州内に実質的なネクサスがなくとも、州が望めば誰にでも課税することができるようになったため、これは州にとっての勝利と言えます。ネクサスが意味するものは、税金を徴収・納付する場合、州となんらかの関りがある必要があります。州内で販売取引などの一定の経済活動が行われたら、他に何もなくともエコノミック・ネクサスと呼ばれます。この決定により、年間10万ドルの売上高または年間200回の取引があれば実質的なネクサスとみなされることがわかりました。しかし、裁判所は、これらより低い数字については指針を提示しませんでした。1万ドルまたは20回の取引は実質的なネクサスと見なされるのでしょうか?見なされるかもしれません。当社は一部の州が許容範囲を広げると信じています。
すでに20以上の州には、エコノミック・ネクサスの法令、規則、または売上税の規制があります。これらの州の多くは直ちに適用し始めるはずです。しかし一方で、41州とワシントンDCが裁判所にQuill v. North Dakotaの判決を取り消すよう嘆願しています。当社は、独自の規則または法令のいずれかによって定めたしきい値を適用する州が出てくることを予想しています。これらの州はサウスダコタ州のしきい値に従うのか、それとも許容範囲を設定するのでしょうか?既にしきい値が高い州はどうするのでしょう?サウスダコタ州に合わせるよう変更するでしょうか?
セラーにとっては大打撃
これはセラーにとっては、多くの面で悪いニュースです。おそらく最も重要なのは、最高裁判所の判決によって、追徴課税、罰金、および利息の徴収の可能性が生じたことです。裁判所がQuill v. North DakotaとNational Bellas Hess v. Department of Revenueの判例を覆してしまったため、州は理論上、これらの原決定の日付に遡って追徴課税や罰金を請求することができます。
セラーが販売を始める前から州が罰金を徴収することはできませんが、あるしきい値を超えた日まで遡ることは潜在的に可能です。私は、州の歳入局やそれに相当する部署のシニアの人々と話をしたり聞いたりする機会がありましましたが、遡及的にしきい値を適用することはないというのが総意だそうです。しかし、多くの州は財政的に困っているので、できることならそうするかもしれません。一部の州が何年か前に遡及しようとしても驚かないでしょう。
州が遡及しない場合でも、セラーは州ごとの売上高および/または取引数を算出する必要があります。しかしこれは、州ごとに独自のしきい値が規定されているため簡単ではありません。
さらに、裁判所は明確な線引きをしておらず、単に経済的なしきい値によってネクサスが作られると述べています。過去に行ったネクサスを作り出す活動のすべてが依然として問題になります。Amazonのセラーにとっては、売上高がしきい値を超えていなくても、倉庫に在庫があれば依然としてネクサスが作られます。
ドロップシッパーも影響を受けます。多くのドロップシッパーは、この判決が出る前は、実際に米国にはネクサスが無いので、国際的なサプライヤーを使用した場合には売上税の問題もなかったのです。しかし、もはや違います。今では彼らが販売するだけで、売上税の徴収を必要とする州とのつながりが生まれます。
執行強化により越境セラーも免除されない
この判決に勇気づけられた多くの州が、その形態如何にかかわらずネクサスがあるセラーを見つけ出し、規則を遵守しないセラーに税金徴収を強制するためのリソースを増やすことで、発見と執行の取り組みを強化すると予想しています。
私の最近の投稿「米国の税金と越境ECについての5つの誤りと、真実を無視することの危険性」の中で、多くのセラーが州の執行権限を過小評価していることについて議論しました。その時以来、私はカリフォルニア州が追跡している多数のセラーに連絡を取りました。各セラーは、カリフォルニア州が米国税関と国境警備局に問い合わせ情報を入手したという手紙をカリフォルニア州から受け取っていました。カリフォルニア州は、入手した情報に応じて、2年から3年の間の未納税分を要求しています。一部は越境セラーで、他は国内セラーです。これが、州がセラーを探す1つの手段になっています。
提言
セラーは売上高および/または取引数を州別に見直し、それを各州が公表しているしきい値と比較する必要があります。これを実行している間、セラーはすべての活動を検証して、ネクサスの範囲を更新するのがよいでしょう。以前行ったネクサスを作るすべての活動は依然として有効です。
一旦セラーがネクサスを持つ場所を決定すると、販売する商品が課税対象であり徴収額が高額の可能性がある場合は、売上税を徴収するための登録をします。一般的には、州は1ドルから徴収したいと考えていますが、特にコンプライアンスへの負担が州に直接支払う未納税、罰金および利息を上回る場合には、財務的な問題の検討が必要になると思われます。州に登録するうえで検討すべきことは次の3つです。
- 将来を見越す
- 過去に遡る
- VDA(自主的修正申告)やアムネスティのような徴収税額の緩和プログラムを活用する
一旦登録されると納税申告書の提出が必要になります。
パニックに陥らない
売上税は極めて重要であり無視すべきものではありませんが、パニックになる必要はありません。売上税は米国内の販売価格に上乗せされ、個別に表示されます。したがって、売上税の徴収は比較的簡単で価格の再計算は必要ありません。
越境セラーにとって、納税処理はやや難しいかもしれませんが、Payoneerのような、ツールの提供を含め納税申告を手伝ってくれる会社がありますので、利用することで日々の業務が楽になります。税金が米国の銀行口座から引き落とされるように要求されている州では、その州に直接支払うことはできませんが、私たちのような会社があなたの税務申告を準備し、銀行にサブ口座を設定し、州がその口座から税金を引き出せるようにします。この場合、あなたからPayoneerに指示して税金を当社に送ることで、当社から州に支払うことができます。なお、Payoneerは当社に送金する際に手数料は請求しません。(日本居住者の方がPayoneerアカウントから支払いをする場合は、別途「メイク・ア・ペイメント」の申込みが必要です。)
今後数週間のうちに、私自身を含め多くの人々が、州の反応、アクション、および今後の方向性についての追加情報やコメントを提供することでしょう。多くのウェビナー、ポッドキャスト、そして資料が出てくるでしょう。あなたが無料のウェブセミナー、ポッドキャスト、および私が執筆したり共同で執筆する資料に関する最新情報を知りたい場合は、私に連絡してください。それらにアクセスできる場所をお知らせします。乞うご期待ください。
ご不明な点がございましたら、mfleming@salestaxandmore.comまでEメールでご連絡ください。(英語のみ)
Mikeは、売上税を中心にビジネスを展開しているMichael J Fleming & Associatesの創設者です。この新しいベンチャー企業を始める前、Mikeは、州と地方の税務問題を解決することに全面的に取り組んでいる会計事務所、Peisner Johnsonの取締役を約10年間務めていました。州税に関して豊富な知識を有しており、特にEC、ネクサス、およびドロップシッピングについては、米国有数の見識者です。彼の文献は出版物に引用されることも多く、頻繁に講演を依頼されています。米国とカナダの課税制度に関する質問や問い合わせをお待ちしています。Mikeの会社は、税務上のすべてのニーズに対するソリューションを提供しています。